嫌になるくらい甘い君
水に溶かした砂糖みたい
like sugar
「サスケ。」
階段を降りていると、上から声がかかった。
低くて、透き通る声が。
「カカシ…」
声のした方を見上げると逆光で表情は見えないが、カカシがいた。
カカシの銀色の髪が陽光を反射して光る。
「何か用か?」
眩しさに目を細めた。
「うっあ、そんな眉間に皺よせなくても。」
苦笑混じりの声にオレは更に眉をひそめる。
「違う。眩しいんだ。」
「そう?」
カカシはちょっと小首を傾げて笑った。太陽のせいで表情は見えないがそんな気
がした。カカシが笑うと周りの光が増すような気がするんだ。
「降りてこいよ。」
「ううん、ちょっと渡したいものがあるだけだから。」
「あ、そう。」
カカシは階段から身を乗り出してオレの頭の上に、何かが入った小さな袋を乗せ
た。
「なんだよ、これ。」
オレは頭からそれを落としてキャッチすると日の光に透かし見た。
「サクラがオレとサスケにって。」
ビニールの袋を見ると金平糖が入っていた。
「金平糖…」
「さっきの任務で依頼人がくれたんだって。」
自分のことの様に嬉しそうカカシはに笑った。
「あんた甘いの平気なのか?」
袋をちょっと振るとざらざらと軽い音がした。
白、黄色、オレンジ、緑。
なんか、食べ物とは思えない。
「うん?これねぇ、そんな甘くないから平気よ?」
食べてみなよ、そう言った後カカシは急ぎの用とかなんとかで姿を消した。
もう少ししゃべってたかったのに。
帰り道を片手に金平糖の入った袋を持ちながら歩いた。
歩くたびにざらざらと音がなる。
なんか、はたからみるとちょっとバカっぽい。
それでもカカシのさっきの笑顔を思い出すと捨てる気にはなれなかった。
『食べてみなよ。』
カカシはこの甘いものを食べてみたのだろうか。
あの大の大人がこんな子供だましな甘いものを口に放り込む姿を想像するとちょ
っと笑えた。
しばらくそんなことを考えたあと、袋から一粒だけ白い金平糖を取り出して口に
放り込んでみた。
味が、しない。
これって舐めるもんだったかな。
舐めるのに焦れて、かんでみた。
ガリッ
口内に甘い、砂糖の味だけが広がる。
砂糖水の味しかない、天然の甘さ。
「うぇっ」
思わず変な声が出てしまった。
なんだ、結局甘いじゃないか。あいつ、嘘つきやがった。
しかめっ面になりながら金平糖をかみ下すと舌が甘さでしびれた。
舌先がざらつく。
水に流すのには惜しいような、口にいやに残る甘さ。
癖になりそう。
ふとそんなことを思ってある顔が頭を過ぎった。
まるであいつみたいじゃないか。
あの笑顔はオレの心にはざらついて嫌なもののはずなのに、いつしかまた見たい
と思っている。
オレには相容れないあの笑顔。脳裏をざらつかせる甘い笑顔。
いつまで見ていられるんだろうか。
そんなことを思いながら金平糖を一粒、また口に放り込んだ。
癖になるかもこの甘さ
君の砂糖で僕をみたして